福島県郡山市から来た夫婦。「空気がさわやかできれい」と何度も口にしながら「拝殿」をのぞき込んだ。独自の参拝方法で二拝四拍手し、天を仰いで大きく息を吸った=山形県朝日町、福留庸友撮影
芽吹いたばかりのブナやナラの林に囲まれた山形県朝日町の山中。福島県郡山市から来た夫婦が独特の参拝方法で二拝四拍手し、天を仰いで大きく息を吸いこんだ。
26年前にできた「空気神社」の境内には、鳥居も拝殿も見当たらない。景色が映り込む5メートル四方のステンレスの鏡が敷かれているだけだ。
「人間になくてはならないのに、空気をまつった神社がないのはおかしい」。一人の町民の突拍子もない考えがきっかけで建てられた。ステンレスは見えない空気を感じるための仕掛けだ。同じ理由で拍手(かしわで)が響くようにステンレスの下には深さ約3メートル、4メートル四方の空間が作られた。内部は神棚や鳥居を設け神殿のようになっている。
当時建設に携わった町民の滝川清一さん(81)は「ご本尊は空気。神社といっても本当の神社じゃない。空気の大事さを感じるモニュメント」と話す。町では条例で世界環境デーの6月5日を「空気の日」と制定。同時期には空気まつりが開かれている。(写真・文 福留庸友)