長野県松本市で2014年、弟と祖母を殺害したとして殺人罪に問われた男性被告(33)の控訴審判決で、東京高裁は11日、懲役8年とした一審・長野地裁松本支部の裁判員裁判の判決を破棄し、被告を無罪とした。大島隆明裁判長は「被告は心神喪失状態だった」として、刑事責任は問えないと判断した。
一審では、被告が心神喪失状態だったことを弁護側が主張せず、同年12月の判決は心神耗弱状態だったと認定。「自己中心的な意思決定で殺害に踏み切った」として、被告を有罪とした。
だが、控訴審から担当した弁護人が「被告は心神喪失状態で、罪に問えない」と主張。被告を精神鑑定した医師とは別の医師の意見書などを提出した。高裁判決は、被告は統合失調症による妄想で「悪魔が祖母を使って弟を大量殺人者に育てた」と思い込んだと認定。妄想を適切に考慮しなかった一審判決は「事実誤認がある」と結論づけた。
弁護人の菅野亮弁護士は「丁寧に判断して頂き、納得できる判決だ。早期の治療につなげたい」と話した。