ワシントンのホワイトハウスで10日にあった定例会見で話すアーネスト大統領報道官。オバマ米大統領の広島訪問などがテーマになった=AP
オバマ大統領の広島訪問決定を、各国はどう受け止めたか。米国内では米政府が原爆投下について謝罪する意図を否定したことで、訪問を「核軍縮」や「同盟深化」の契機と捉える見方が広がった。一方、中国や韓国では、日本が戦争の「被害者」のイメージを強めかねない、と懸念する声が上がった。
オバマ氏、27日に広島訪問 現職の米大統領で初
特集:核といのちを考える
■「謝罪」との批判目立たず
懸念されてきた米国内の反発は発表当日の10日、目立たないものだった。
「(日米)両国は核不拡散をリードし続ける」(民主党下院トップのペロシ院内総務)など、民主党議員からは「核なき世界」の理念への賛同や日米関係の深化の観点から広島訪問を歓迎するコメントが相次いだ。対照的に、オバマ氏の外交姿勢に反発してきた野党共和党側からは、批判を含め反応自体が薄かった。
米メディアでも好意的な報道が大多数を占めた。「オバマが公式謝罪をするとは予想されないが、訪問は間違いなくそのように見られるだろう」(保守系ニュースサイト・ブライトバート)といった批判もあるが、全体では埋没ぎみだ。
オバマ政権下では、ルース駐日大使(当時)、後任のケネディ大使が広島を訪問。今年4月には、ケリー国務長官が米閣僚として初めて広島を訪れた。
米ダートマス大学のジェニファー・リンド准教授は、ホワイトハウスがこれまでの広島訪問を「核廃絶」「平和への祈り」「日米同盟」と結びつけ、謝罪と切り離してきたことが、奏功しているとみる。リンド氏は「今回も、ホワイトハウスは、謝罪と距離を置いている」とした。
共和党側から目立った反発がなかったことについては「典型的には(保守派は)歴史を再考する行為は好まず、訪問は支持しない。しかし、一方で中国の台頭もあり、日本が今、最も重要な同盟国の一つとみている。訪問が日本のためになるという考えもあるのではないか」と分析した。
ただ、オバマ氏には「謝罪」を巡って苦い経験がある。2009年の訪日時に天皇陛下と会見した際、深々と頭を下げた姿が報道され、米メディアで「謝罪」と関連付けて非難された。謝罪は米国民から強い拒否反応が起きる。実際の広島訪問でどんな反応が出てくるか、見通せない部分も残る。(ワシントン=杉山正)