小ぶりなカメラを手に、選手を狙い続ける渡辺光子さん=名古屋市のパロマ瑞穂スタジアム、吉本美奈子撮影
クラブ史上初めてサッカーJ2を戦う名古屋グランパスをカメラで追い続けて四半世紀。選手から「おばちゃん」と慕われる渡辺光子さん(73)=愛知県豊田市=は今季も「現役」を貫く。迫力あるプレー写真は撮れない。でも、フレームに収まった選手たちの素顔は温かさに包まれている。
「勝ててよかった。サッカーのことはよく分からないけど、見ていて楽しくて時間が過ぎるのが早かったね」。先月末の開幕戦を見届け、笑顔で話した。
写真好きと言っても、元々は子供が小中学生の頃にPTA役員として会報用に部活動の撮影をするぐらいだった。雨の中で泥だらけになりながらボールを追いかける姿に感動し、サッカーに興味を持った。
グランパスとの出会いはJリーグが始まる前年の1992年。関わっていたミニコミ紙の取材で、ブラジルの名門クラブ「コリンチャンス」が豊田市で開いたサッカー教室を撮影。チームに贈ったところ、グランパスとの親善試合に招かれた。そこで地元クラブの存在を知り、練習や試合に足を運んで撮影するようになった。
グランパスを追いかけ始めた頃はピッチ内で球拾いを手伝いながら撮影していた。「選手や家族の記念になれば」と自費で現像しては渡した。選手、監督として計14シーズンを過ごしたドラガン・ストイコビッチ氏(52)の思い出深い1枚がある。97年6月18日の雨中の試合だ。屋根付きベンチから、ピッチ際の渡辺さんにピースサイン。「雨にぬれるからこっちにおいでよ」と言わんばかりに手招きされた。「慌てて首を横に振って両手でバツ印を作った」
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