エンブレムの最終選考作品を制作した久野梢さん(左)、後藤崇亜貴さん(中央)、藤井智恵さん=東京都港区、池永牧子撮影
東京五輪・パラリンピックの新しいエンブレムが野老(ところ)朝雄さん(47)の作品に決まったが、最終審査に残ったほかの3作品もそれぞれ人気を集めた。デザインを滝川クリステルさんから着想したり、「人」という字をデザインに忍ばせたり――。1万4599点から残った3人に作品への思いを聞いた。
浅草で着想、自由な筆運びに 選ばれなかったエンブレム
花びらに「人」の字忍ばせた 選ばれなかったエンブレム
エンブレム問題をまとめ読み
■作品B 久野梢さん(38)
発想の出発点は、招致プレゼンテーションでの滝川クリステルさんのパフォーマンスだ。「おもてなし」と言ってペコリとお辞儀。その印象から「日の丸がお辞儀するイメージを表現できないか」と考えた。日の丸をカラフルな輪に置き換え、パラリンピックのエンブレムではお辞儀しているように見せた。
実家は愛知県東海市の酒店。絵が得意だった中学のころ、父に勧められ、店頭のガラスにアクリル絵の具で絵を描いていた。夏はヤシの木、冬はクリスマス。美大進学を考え始めたのもその頃だ。武蔵野美大で視覚伝達デザインを専攻。自他共に認める「あがり症」で就職活動は苦労した。「面接の時、緊張でこけたこともあって……」
拾われた東京都内の絃デザイン研究所で才能が花開く。現在は入浴剤や防虫剤など、パッケージデザインを次々と生み出す。東京ドームシティの観覧車のロゴはコンペで勝ち取った。