子どもシェルター「ぬっくハウス」の個室。職員が各部屋にクマのぬいぐるみとラジカセを置く=大阪府内
傷ついた子どもたちにぬくもりを――。児童虐待が全国最多の大阪府内に先月、初の「子どもシェルター」ができた。親の暴力や貧困で家にいられない10代後半の若者が過ごす。「心と体を休め、一歩踏み出せるまで寄り添う場を」と関係者が準備を進めてきた。
特集:児童虐待
「安心して眠れるよう、寝具にこだわったんです」。職員がシングルベッドのマットレスを押さえ、明るい色のシーツを整えた。星や花柄のカーテンとクマのぬいぐるみが、自宅のような温かみを感じさせる。
シェルター「ぬっくハウス」は個室が五つある一軒家。性暴力の被害に遭いやすい、おおむね15~19歳の女子が対象で、安全のため場所は非公開だ。過ごす期間は2カ月が目安という。
NPO法人「子どもセンターぬっく」(大阪市北区)が運営する。「ぬっく」は「子どもたちにぬくもりのある生活を」との思いから名づけられた。児童福祉施設の元職員やボランティアスタッフが共に生活し、食事をつくって一緒に食べる。携帯電話は預かり、通院や買い物にも付き添う。厚生労働省の補助金と寄付で運営される。
中心メンバーの森本志磨子(しまこ)弁護士(44)は少年事件にかかわり、児童養護施設の出身者を支援してきた。
親の家賃滞納で家を出された女子中学生。姉と行った居候(いそうろう)先で覚醒剤を勧められて使い、少年院に入った。妊娠していた。帰る場所がないために、仮退院が1年延びた。住み込みの職場でいじめられ、仕事をやめて野宿していた施設出身の男子もいた。「本来なら保護されるべき少年少女。何げない日常生活が一番必要」と気づいたという。
大阪府内で児童相談所が対応した児童虐待は1万3738件(2014年度)。5年連続で全国最多だ。相談所の一時保護所はいつも「満員」で、大阪の子どもが東京の施設に一時避難することもあった。