「無店舗型」風俗店は増えている
都内に住む女性(27)は限界を感じていた。ホテルなどで客と会う派遣型(無店舗型)風俗「デリヘル」で働き始め4年。3歳下の弟が大学に通う学費や実家の援助のために始めたという。週4日ほど出勤し、月収は30万円ほどになるが、発熱や嘔吐(おうと)という体調不良に頻繁に襲われていた。
「風俗の闇照らしたい」 待機所で借金や暴力の悩み聞く
昨年秋、風俗店で働く女性の「セカンドキャリア」を支援する団体があることをネットで知った。一般社団法人「Grow As People」(GAP、東京都荒川区)だ。風俗以外に職業経験が乏しい女性たちに、スキル(技術)を身につける場を提供していた。
GAPの特徴は、風俗の仕事を続けながら、やめる準備ができることだ。風俗の仕事がない日を使い、GAPや非営利団体(NPO)で、インターンシップをしてスキルを習得していく。例えばホームレス支援や教育支援という実践的活動をしているNPOならば、事業計画づくりなどを学べる。
女性は、週1回、GAPでのインターンを始め、音楽関係者のホームページづくりを担当した。IT知識に加えて、ビジネスメールの書き方も教わった。「風俗勤務だけの時は、社会から切り離されている感じだった。人に言える活動をして、自己肯定感が強くなった」。3月から、さらに情報技術を磨こうと職業訓練に通い始めた。近い将来、風俗から「卒業」するつもりだ。
「稼げている女性でも収入が落ちる『40歳の壁』にぶつかる。その前に次の道に進めるように導いてあげたい」。代表の角間惇一郎さん(32)が風俗で働く女性たちの声を聞き始めたのは2010年のことだ。この年の夏、大阪市で風俗店勤務の女性が子ども2人を餓死させた事件が起きた。報道が出る数日前、たまたま、ある風俗店オーナーと知り合う機会もあった。「風俗の世界で何が起き、女性の現状はどうなっているのか。詳しく知りたいと思うようになった」
多くの女性が厳しい状況にあった。職を離れて、生活保護を申請したいけど分からない。望まない妊娠を誰にも言えない――。12年にGAPを設立し、孤立しがちな女性たちの相談、支援を始めた。次第に風俗専業の女性たちが履歴書の「空白」を抱えるために、転身できない問題を重視するようになった。それが、いまの活動になった。これまでに30人ほどの転身に結びついた。
「プライドを持って高収入を得ている女性がいる一方、仕事がきつくて次の道に進みたい人たちも多い。夜の仕事から昼の仕事への懸け橋となる支援を続けていきたい」(高野真吾)