標高22メートルの防波壁に囲まれた中部電力浜岡原発=3月、静岡県御前崎市、朝日新聞社ヘリから
中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)が全面停止してから14日で5年が過ぎた。南海トラフ巨大地震の想定震源域にある唯一の原発。地元では、事故の不安を抱えながらも、原発に頼らざるを得ない生活があり、「脱原発」の声が封印されつつある。
浜岡原発から東に2キロ。民宿「魚松荘」の大型連休明けの11日の宿泊客は、再稼働に向けた安全対策工事の作業員数人だった。
作業員の予約は8月まで入っているというが、宿を経営する松井生月(せづき)さん(59)は「工事が終わったら、どうなるのか」と不安を口にした。津波対策の標高22メートルの防波壁は完成。放射性物質を薄めて外に逃がす「フィルターベント」の設置などの対策工事は来年9月までに終わる予定だ。
福島の事故を目の当たりにした5年前、「地震で事故が起こるとは……」と停止も受け止めた。防波壁を造っている時は満室になったが、完成した今は減っている。2年前に落花生の栽培を始め、煮物を地元の新産業に育てようと試みた。でも小遣い程度の稼ぎにしかならない。
近くに原発があるのは今も不安だが、「動けば、定期点検が毎年あって、食っていけるだけの客が来ると期待してしまう。正直言えば、もう一度動かして欲しいと思う」。