庁舎に掲げる新しい横断幕を披露する東京都台東区の服部征夫区長(中央)ら=区役所
東京・上野の国立西洋美術館本館が世界文化遺産に登録される見通しとなったことを受け、地元の東京都台東区は正式決定に向けた準備を本格的に始めた。
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服部征夫・台東区長は18日、世界遺産登録に向けた機運を盛り上げるため、区役所に掲げる新しい横断幕(横3メートル、縦50センチ)を発表した。これまでの「国立西洋美術館を世界遺産に」から、「国立西洋美術館 世界遺産『登録』勧告 7月の世界遺産登録へ大きく前進!」に。区役所の入り口2カ所に設置するという。
服部区長は「勧告に際して、地元の盛り上がりが評価されたことをうれしく思う」。登録が最終的に決まる7月の世界遺産委員会が開かれるトルコ・イスタンブールに足を運ぶ予定だ。
西洋美術館前ではこの日午前、入館待ちの行列ができた。静岡県御殿場市から長女と訪れた渡辺春子さん(65)は「天井から採光しているという建物の構造や内部の特徴なども今日はしっかり見たい」と話した。
神奈川県鎌倉市の県立近代美術館鎌倉(鎌倉館、3月に閉館)は、西洋美術館を設計したフランスの建築家ル・コルビュジエに師事した坂倉準三が設計した。近代美術館の元館長、酒井忠康さん(74)は「『兄弟館』が世界遺産に登録されれば喜びもひとしお」と声を弾ませた。酒井さんによると、来日したコルビュジエを坂倉が鎌倉館に案内し、その後、西洋美術館本館が設計されたという。
「鎌近」の愛称で親しまれた鎌倉館は、土地を所有する鶴岡八幡宮が今後の活用法を検討中。酒井さんは「世界遺産登録で鎌倉館の評価も高まる。坂倉先生も浮かばれると思う」と話した。(円山史、佐藤純、永田大)