遺体が見つかった雑木林の前で手を合わせる人たち=28日午後、沖縄県恩納村安富祖、大野択生撮影
元米海兵隊員で軍属の男が死体遺棄容疑で沖縄県警に逮捕された事件で、被害女性(20)の遺体が見つかった場所を多くの人が訪れている。追悼、怒り、痛み……。行方不明から1カ月。訪れた人たちに思いを聞いた。
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那覇から車で1時間半、沖縄本島北部の恩納村。リゾートホテルが並ぶ西海岸から少し東に入ると、北部の森を代表する樹木イタジイが生い茂る。森を通る県道沿いの一角を埋めるように、花束が置かれている。数えられる限りで400束以上。菓子やジュース、「このようなことがおこることのない沖縄にする」と書かれたカードもある。
交通量は多くないが、次々に路肩に車が止まり、降りた人たちが、しばらくじっと手を合わせては去っていく。年配夫婦、子ども連れ、若い女性のグループと様々だ。
国吉真章さん(63)は、妻とともに那覇市からやってきた。花束の山の前でしゃがみ、手を合わせた。「被害者と面識はないが、冥福を祈らずにはいられなかったんです」。米軍基地を抱える嘉手納町の女性(20)は涙を浮かべて森の奥を見つめていた。「同い年なのに、こんな寂しいところに置かれていたなんて。被害者は、わたしたち県民みんなでもある」
政府や米軍への不信感をにじませる人も。被害者が暮らしていたうるま市から来た女性(34)は、事件後、8歳の長女に外出を控えさせているという。在沖米軍は27日、綱紀粛正のための命令を出したが、「信用できない。繰り返されると思うから自分たちで身を守らないと」と話した。
那覇市から来た会社員横山知枝さん(44)は、「ひと息ついて」と缶コーヒーを置いた。「沖縄の現状を変えられなかった。わたしたち一人ひとりに、事件の責任がある」と語った。(大野択生、井上怜)