貸与式で銃を受け取る上原義迪さん(16)。「簡単に人を殺してしまう危険なものだから、怖さもあるけど、国民を守るためにきちんと扱いたい」。中国・上海生まれ。尖閣諸島をめぐる反日デモでけがする人や日本料理店が壊されるのを間近で見て、日本人を守れるようになりたい、と自衛官を志した。母は中国人で、家族は今も中国に暮らす。「戦いたいわけじゃない。不満は話し合いで解消できたら」=4月12日撮影
「銃を初めて手にして、自衛官に一歩近づいたうれしさと、責任の重さを感じます。人を守り、人を殺す道具だから」。4月、銃貸与式を終えた2年生の少年(16)は、あどけなさの残る笑顔で話した。
陸上自衛隊高等工科学校(神奈川県横須賀市)で、15~19歳の男子生徒約950人が全国から集い、自衛隊の訓練を重ねている。
生徒たちは、自衛隊の役割が大きく変わっていく流れの中にいる。3年生が入校した2014年、7月に集団的自衛権の行使容認が閣議決定された。2年生が入った5カ月後の15年9月に安全保障関連法が国会で成立。そして今年3月の施行後に、1年生が学校の門をくぐった。
自衛官を目指す彼らの素顔を、昨春から追った。(写真・文 川村直子)
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〈陸上自衛隊高等工科学校〉 陸上自衛隊武山駐屯地の敷地内にある、中学卒業後すぐに自衛隊の訓練を受けられる唯一の学校。技術系の専門教育や普通科高校と同等の授業があり、高卒資格を得られる。全寮・3年制で、学費や食費などは無料。生徒は特別職国家公務員となり、手取りで月約8万円の手当が支給される。ほとんどの生徒は卒業後、1年間の教育訓練を経て3等陸曹の自衛官となる。