民泊施設の進出が相次いでいる住宅街の路地。騒音などのトラブルも起きているという=京都市左京区
突然、ご近所に旅行者が押し寄せるようになったら? 空き部屋などに旅行者を有料で泊める「民泊」について近隣住民の不安が高まっているとして、京都市が厳しい姿勢をみせている。国は普及のため規制緩和を進めるが、京都市は受け入れず、逆に市民から違法な民泊施設の通報を受け付ける「民泊110番」の開設を決めた。一方、施設を提供する側からは戸惑いの声も聞こえる。
京都市、「民泊110番」開設へ 通報→現場調査
■マンションの半分を民泊利用、住民に不安
「近所で民泊を始めたい」。左京区の閑静な住宅街で暮らす女性(72)は昨年11月、東京の不動産業者から、そんな文書を受け取った。女性は当時、町内会長。自宅近くのマンション16部屋のうち8部屋を民泊施設にすると説明された。
インターネットで民泊仲介サイトを見ると、そのマンションの部屋は1泊5千円から2万円ほどで宿泊客を募集していた。住民らは業者に営業をやめるよう求め、市にも相談。募集は数週間後に消え、客の出入りもなくなったという。
前後して長屋風の女性宅の隣の部屋が民泊施設になった。東京の若い男性から昨年秋ごろ民泊施設にすると告げられた。「鍵の開け方が分からない」と外国人が尋ねてくるたび、解錠方法を仕方なく教えている。
女性は「宿泊者の身元を確認している形跡がなく、火事や犯罪が心配。何か起きた時に東京で対応できるはずがない。夜中のスーツケースの音もうるさい」とうんざりしている。
旅館業法上、ホテル、旅館、下宿以外に料金をとって客を泊めるには簡易宿所として自治体の営業許可をとる必要がある。だが、5月にまとめた市の調査では民泊仲介サイトに登録された市内の施設約2700件のうち許可を得ていると確認できたのは7%だった。
背景には京都市の外国人宿泊者数の増加がある。2014年は前年比62%増の183万人に達した。15年の市内主要ホテルの稼働率は88・9%と、ほぼ満室の状態だ。多くの外国人旅行者が「民泊」を利用しているとみられる。
15年度に違法営業の疑いがあると市が把握した「民泊」は276件。騒音やたばこの火の不始末など、近隣トラブルを起こしたケースも多い。このうち95件は営業をやめた。昨年12月には、京都府警が右京区で民泊施設を無許可営業していた容疑で、運営業者らを書類送検したこともある。