亡くなった男児=母親提供
埼玉県富士見市のマンションの一室で2014年3月、男児(当時2)の遺体が見つかった事件で、殺人などの罪で起訴された元ベビーシッター、物袋(もって)勇治被告(28)の裁判員裁判が10日、横浜地裁で始まる。裁判を前に1日、男児の母親(24)が取材に応じ、「なぜ子どもがこんな目に遭わなければならなかったのか。法廷では真実を明らかにしてほしい」と心境を語った。
「なんで私が生きているのか」。母親は預け先の「正体」に気づけなかったことを今も悔いている。事件前に物袋被告に子どもを預け、トラブルになったことがあった。事件時は、メールでのやり取りから、預かってくれているのは女性だと思っていたという。
飲食関係の仕事をしていたシングルマザーの母親は、インターネットのベビーシッター紹介サイトを通じ、女性に渡してくれると思って別の男性に男児とその弟を預けたところ、物袋被告に引き取られた。まもなく3歳になる男児の誕生日プレゼントを買ったり、将来習い事をさせたりするためのお金をためたいと考えながら、働いていた。
3日後、神奈川県警が被告の部屋から男児の遺体を発見。生後9カ月の弟も低体温症に陥っていた。「子どもはただ無邪気に生きていただけなのに」
物袋被告は逮捕当初、「男児と一緒に風呂に入り、目を離したすきに溺れて浮いていた」などと殺人容疑を否認。関係者によると、裁判でも殺人罪の成立を争う方針だ。また、弟についての保護責任者遺棄致傷罪も、きちんとミルクを与えていたとして否認するという。物袋被告はこのほか、わいせつ目的誘拐や強制わいせつ、児童買春・児童ポルノ禁止法違反などの罪でも起訴されている。
弟は現在は回復し、保育園に通う。「上の子に、だんだんと顔や好みが似てきた。生き残った子のためにしっかりしないといけないとの思いが今の自分を支えている」と母親は言う。弟は近く、男児が迎えられなかった3歳の誕生日を迎える。
裁判は7月20日に判決が言い渡される予定。(古田寛也)