児童虐待容疑者の検挙人数
最高検は1日、児童虐待に対応する専門部署を発足させた。増え続ける事件に歯止めをかけるため、児童相談所や医療機関などとの連携を密にする。被害児童の保護に加え、虐待を繰り返さないため、親らの再犯防止対策にも力を入れる。
特集:児童虐待
新たに立ち上げた「刑事政策推進室」は、児童虐待対策、再犯防止、被害者保護の三つの政策について、それぞれ担当の検察官と検察事務官を置き、全国の地検に助言や指導をしたり、関係機関への窓口となったりする。刑事処分を決める以外にも、被害者や加害者の支援策を総合的に検討していくという。
特に力を入れるのが、児童虐待対策だ。警察庁によると、2015年に児童虐待の疑いで摘発された容疑者は811人で、10年前の3倍を超えた。容疑者を起訴して刑を科しても、家庭に戻った後に虐待を繰り返すケースも起きている。また、警察官と検察官、児童相談所職員らがそれぞれ何度も事情を聴くと、被害を受けた児童に心理的負担を与えることも課題だ。
これまでも各地検がそれぞれに取り組みを進めてきた。昨年10月には最高検が、警察や児童相談所などとの情報交換の窓口の部署を各地検に設けるよう通知を出している。仙台地検では、心理カウンセラーの資格をもつ検察事務官が、親の就労支援をしたり、アルコール依存症の治療を促したりして更生をはかるプログラムをつくっている。今回設けた部署は、こうした各地の実施例を集めて紹介する役割も担う。室長につく和田雅樹検事は「医療や福祉との連携を深め、適切な刑事処分のあり方を考えていきたい」と話している。
■刑事処分の時に事情考慮を
「検察は罰を与えることしか考えていない」。東京都内で児童虐待の相談にのるカウンセラー箱崎幸恵さん(51)は10年ほど前、ある虐待死事件に関わってそう感じた。