「マグダス・ホテル」のラウンジバーで、客を迎える準備をするアフガニスタン出身のアミニさん(左)と、ナイジェリア出身のイシクエメさん=ウィーン、喜田尚撮影
昨年、中東やアジアから100万人以上が難民として保護を求めた欧州。一人ひとりが受け入れ先で自立できるかが大きな課題だ。だが、難民らの就職には難問が立ちはだかる。昨年だけで人口の1%を超える9万人が難民認定を申請したオーストリアで、厳しい現実を見た。
ウィーン在住のニコラス・イシクエメさん(37)は昨年、やっとオーストリア政府から難民の地位を認められた。イスラム過激派の活動が活発化したナイジェリア北部からトルコ、ギリシャを経てたどり着いたのは2002年。申請から認定まで13年もかかった。難民審査が始まって3年で英国へ密航したからだ。
オーストリアで難民認定を申請すると保護施設に住むことができ、食事と月40ユーロ(約4900円)の現金も支給される。だが、認定されるまで働くことは許されない。イシクエメさんは「何もしない生活に耐えられなかった。自暴自棄になるほど、働きたかったんだ」と振り返る。
不法移民となってロンドンでさまざまなヤミ労働に就いた。2年で発覚してオーストリアに戻され、いったんは難民申請も却下された。異議申し立てなど曲折を経て認定。ようやくカトリックの奉仕団体「カリタス・ウィーン」が昨年開業した「マグダス・ホテル」に初めて職を得た。
ただ、法的に就労が可能になっても、難民らには大きな壁が待ち受ける。
イシクエメさんの同僚でアフガニスタン北部出身のエフサン・アミニさん(24)は、10年にオーストリアに来て9カ月で難民の認定を受けた。就職の障害は公用語のドイツ語だった。