ディーン・フジオカさん
世界中で愛される絵本「ピーターラビットのおはなし」の作者、ビアトリクス・ポター生誕150周年の今年、「ピーターラビット展」(朝日新聞社など主催)が開かれる。展覧会のオフィシャルサポーターを務め、音声ガイドのナビゲーターも担当する俳優のディーン・フジオカさんに、作品の舞台となるイギリスの湖水地方の印象や、絵本と自身の子どもとのかかわりなどについて話を聞いた。
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――「ピーターラビット」の舞台、イギリスの湖水地方を訪ねたそうですね。
「やっと行くことができました。色々な国に行っていたけれど、なぜかイギリスには縁がなくて。音楽が好きで、小さい頃から行ってみたかったので、長年の夢がかないました」
――自然豊かな湖水地方と、生まれ故郷の福島に似たところはありましたか?
「ちょっと似ていると思う部分はありました。通っていた学校は千葉の都会でしたが、長期休みには必ず福島に行って大自然の中で遊んでいました。川に入ってザリガニをとったり、森でカブトムシをとったり。そういう意味では、作者のビアトリクス・ポターさんの体験に近いものを感じました。彼女も湖水地方をふるさとみたいに感じられたからこそ、湖水地方に引っ越したのだと思います」
――ビアトリクス・ポターの足跡をたどって、どのように感じましたか?
「かわいらしいキャラクターを描いた人なので、やわらかい人だと思っていましたが、実際に湖水地方で彼女と会ったことのある人に聞いてみると、地元の人とあまり触れあわずに孤独な生活をしていたということを知り、イメージが変わりました。でも孤独な時間があったからこそ、自分のイマジネーションを広げることができ、多くのものを残せたのではないかと思います」
――「ピーターラビット」はいたずら好き。お母さんの言うことを聞かずに畑に行って大変な目にあいますが、ディーンさんの2人のお子さんもいたずらをしますか?
「まだ1歳半ぐらいなので、いたずらというほどのいたずらはできていません。とにかくかわいいですね、見ていて。言うことを聞かなかったり、物を投げたりする姿もかわいいなあと思って見ています」
――お子さんたちに絵本を読むことはありますか?
「あります。絵本の中の『ABCD』を指さして、『AAA』と言わせたり、『ワン・ツー・スリー』とやったりします」
――ディーンさんご自身は本をよく読まれますか? 東山彰良(あきら)さんの直木賞受賞作『流(りゅう)』を、ご自分のSNSにアップしていましたが。
「自分のルーツに関係している本にひかれます。『流』や、ちょうどイギリスに行くときに読んでいた門田隆将(かどたりゅうしょう)さんの『この命、義に捧ぐ』は、どちらも台湾と日本、そして中国大陸と国民党軍を描いたものです。私の父は中国生まれですし、祖父は蔣介石と行動を共にしていて、蔣介石が台湾に逃げるタイミングで、日本に帰ってきたと聞いています。個人的にすごく興味を持って読みました」
――作品が描かれた背景や舞台となった場所を知ることで、作品への見方は変わりますか?
「『ピーターラビット』の物語の場面をなぞって歩いてみて、実際に自分が体験した物語のように感じられました。肌の感覚とか、においとか、そういうものを感じたうえで作品を読むと、すごくパーソナルな物語に近づく。そんな楽しみ方もあると思います。そういう意味では、時間があったら湖水地方に旅行されるのもいいと思います。とはいえやっぱりイギリスは遠いので、『ピーターラビット展』は、『ピーターラビット』の世界と距離感が近づくいい機会だと思います」
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「ピーターラビット展」は8月9日から10月11日まで、東京・渋谷の「Bunkamuraザ・ミュージアム」で開催される。その後、全国に巡回予定。当日一般1400円。展覧会公式サイトは
http://www.peterrabbit2016-17.com/
(聞き手・梅本響子)