指定暴力団工藤会系組幹部の裁判員裁判で、被告の知人とみられる男が裁判員に声かけをしたとされる問題は、裁判員4人が辞任する事態となった。裁判員裁判を続けることはできるのか。
「あなたたち裁判員にどうこうできないでしょうけど、よろしく頼みます」。捜査関係者によると、男はこうした内容の言葉を裁判員らにかけた。黒い服に髪形はオールバックだったという。捜査当局はすでに現場にいた男2人を特定。1人は元工藤会系組員、もう1人は被告の同級生で、声をかけたことを認めているという。
何人の裁判員が接触を受けたのか、裁判所は明らかにしていない。しかし、補充裁判員2人を加えても6人に満たず、このまま判決を下すことはできない。
水戸地裁では2014年、放火の罪に問われた男の裁判で、補充を含む裁判員8人全員が体調不良などを理由に辞任を申し出た。地裁は全員を解任し、新たな裁判員を選任し直して、検察官の起訴状朗読から審理を再開した。
ただ今回のように、暴力団関係の裁判で裁判員への声かけが辞任につながった疑いのある事例は「相当珍しい」(ベテランの刑事裁判官)。裁判員を選び直しても、同様の事態が再び起きないとも限らない。