キャンプ・ハンセンのゲート前を歩く米軍関係者。真っ暗な街の様子を見回して、すぐ基地に戻っていった=7日午後11時6分、沖縄県金武町、岡田玄撮影
沖縄県で女性を殺害し遺体を遺棄したとして、米軍属で元米兵の男が逮捕された。米兵の飲酒運転による人身事故もあり、日本に駐留する米海軍と沖縄の全米軍はそれぞれ、軍人らの飲酒や外出を制限した。基地の街を歩くと、閑散とした通りで、米兵相手の商売をする人たちが複雑な思いを抱いていた。
特集:沖縄はいま
極東最大の米空軍基地、嘉手納基地を抱える沖縄県沖縄市の「ゲート前通り」。7日夜、米兵向けのショークラブの壁には英語で、「6月24日まで閉店」と書いた紙が貼ってあった。24日は禁酒令の期限だ。別の店の前に座っていたフィリピン人のバンドマン(33)がつぶやく。「事件以降、客が一人も来ない。あと2カ月も続けば、この辺りは全部つぶれる」
北に約20キロ、同県金武(きん)町の米軍キャンプ・ハンセン前の歓楽街「新開地」も明かりはまばらだった。酒屋を営む村田洋子さん(50)は「売り上げは3分の1になった」。事件後、酒を納めている15軒の「外人バー」の大半が店を閉めたという。
沖縄の米軍は、米兵による2012年の女性暴行事件後も外出・飲酒を制限。飲食業関係の団体の要請で14年12月に緩和した。「解禁後も事件はまた起きる。そして外出禁止。その繰り返しだ」。町社交飲食業組合の大道智組合長は言う。
沖縄の県民総所得に占める基地関係収入の割合は、本土に復帰した72年は15%ほどだったが、近年は5%前後にまで減った。それでも、基地周辺には「客の多くが米兵」という店がある。
米兵に人気の食堂「ホワイトキッチン」の店内には米兵の写真がびっしり。経営する普久原(ふくはら)朝太郎さん(76)は「いい人ばかりだよ。今はみんな夜9時には基地に帰る」。ただ、硬い表情で続けた。「外人相手の店だからって、事件を許すわけにはいかない」