報告書を提出後、会見する第三者検証委員会の田中康久委員長(中央)、佐々木善三委員(左)と長崎俊樹委員=16日午後、東京都千代田区、遠藤啓生撮影
東京電力福島第一原発事故で、炉心溶融(メルトダウン)の判断基準があったのに公表が遅れた問題で、東電の第三者検証委員会(委員長=田中康久・元仙台高裁長官)は16日、「当時の清水正孝社長が『炉心溶融という言葉を使うな』と社内に指示していた」などとする報告書をまとめた。清水元社長が首相官邸側から、「炉心溶融」を認めるのに慎重になるよう要請を受けたと理解していたと推認されるとしたが、意図的な隠蔽(いんぺい)と評価することは困難とした。報告書は同日、東電に手渡された。
一方、当時、首相だった菅直人・衆院議員は「私自身が東電に『炉心溶融』という表現を使わないように指示したことは一度もない」などと、関与を否定するコメントを出した。
東電は、事故から約5年後の今年2月になって、社内マニュアルの存在を明らかにした。柏崎刈羽原発を抱え、福島第一原発事故の検証を独自に続ける新潟県の技術委員会の求めで行った調査で存在が分かったという。東電は問題の経緯や原因を検証する第三者委を3月に設置。田中委員長や元東京地検特捜部副部長の佐々木善三氏ら3人が、東電の社員ら60人に聞き取り調査した。