東京都の豊洲市場に関する都議会の調査特別委員会(百条委員会)の証人喚問が11日始まり、市場用地の売買交渉初期に土地を所有する東京ガスが土壌汚染を公表する直前、都幹部が「都が『安全宣言』をしないと地価が下がるのでは」と東ガス側に伝えていたことが分かった。東ガス提出の交渉メモの内容が質疑で明らかにされた。
質疑などによると、メモは2000年12月22日のやり取り。都の理事が東ガス担当者に対し、購入を希望していた東ガス工場跡地について「石原(慎太郎)知事が安全宣言をしないと、東ガスにとっても土地の価格が下がって困るだろう」などと話したとされる。
理事は「(交渉に関する)指示が副知事から出ている」とも発言。交渉役だった浜渦武生副知事(当時)の指示をうかがわせていたという。東ガス側は都の意図を、「『安全宣言』で(東ガスを)救済するから(交渉を進める)結論を出せ」と受け止めたようだ。
都の強引な説得の過程が見えてきた。百条委で質問した公明の上野和彦都議は「都側がこんな裏取引を持ちかけようとしていたことが、明らかになった」と指摘した。
この後の01年1月、東ガスは豊洲で環境基準値の1500倍のベンゼンが検出されたと公表した。それでも交渉は進み、都は同2月21日、東ガスと売買協議を進めることで合意し、石原氏が都議会で明らかにした。当時、都は「土壌汚染対策をすれば安全」との立場を示していた。
東ガスは当初、土地売却に消極的だったが、00年に交渉役が浜渦氏に代わってから進展した。浜渦氏は同10月に「水面下でやりましょう」と東ガス側に持ちかけたが、その後のやり取りが不明瞭だった。都と東ガスは01年7月、売買に関して基本合意を結んだ。
東ガス側の交渉メモの作成者は不明で、11日に喚問された9人の東ガス幹部らは記録について「知らない」と口をそろえた。