「ネットにものを書くことは、渋谷の交差点に掲げることと同じ」=いずれも小木曽さんの講演資料から
インターネット上に不用意な書き込みをしたり、違法行為を見せびらかしたりして、猛烈な非難を受ける「炎上」が急増している。手軽に書き込みや画像を発信できるスマートフォンの普及が背景にある。若者らに炎上の怖さと、防ぎ方を説いて回る専門家の講演を聴いた。
「皆さんの中に今後、ネットで失敗して人生を駄目にする人が1人か2人います。この人数をゼロにしたい」
東京都文京区の都立工芸高の大教室で4月、IT大手グリー(東京)の小木曽健さん(43)が1年生90人に話し始めた。2010年に入社し、ブログやチャットなどのネットサービスで規約違反行為がないかパトロールする部署の責任者を務めた。その経験をもとに5年前から中高生や企業を対象に講演を始めた。最初の年は9回。それが昨年は385回に増えた。一番伝えたいのは「ネットと現実は常に地続き」ということだ。
教室のスクリーンに東京・渋谷のスクランブル交差点の写真が映った。真ん中に学校名や携帯番号を書いたボードを掲げた少女が立っている。
「インターネットにものを書くということは、この交差点に掲げることと同じ。まだこの交差点の方がましなくらいです」。通るのは1日40万人。ボードを下ろすこともできると解説し、「でもインターネットは一度あげたら二度と下ろせません。全世界に公開され続けます」と加えた。
次に、男子中学生3人が同級生を暴行する「いじめ動画」をユーチューブに投稿した時の炎上の分析結果を紹介した。少年らがスマートフォンから動画を投稿したのは、午後8時すぎ。動画がネット掲示板「2ちゃんねる」に転載され、炎上が始まったのはわずか10分後のことだった。