保護者による虐待や無戸籍など特別な事情があれば、小学校を卒業していなくても中学入学を認めることが適当だとする通知を、文部科学省が17日付で都道府県教育委員会などに出した。これまでは小学校を卒業していないと中学入学は認められなかった。
文科省が昨年7月に公表した調査結果では、6~15歳で戸籍を持たない「無戸籍の子」が全国で少なくとも142人に上った。うち1人は調査時点で就学しておらず、未就学期間があった子も6人いた。
政府の教育再生実行会議は今年5月、個々の家庭の経済状況などを踏まえ、「全ての子どもの能力を伸ばす教育」を提言。2日に閣議決定された「1億総活躍プラン」にも「課題を抱えた子どもたちへの学びの機会の提供」が盛り込まれた。
学校教育法で、中学校は「小学校における教育の基礎の上に」教育をする場とされ、小学校卒業者しか進学を想定していない。文科省は、特別な事情があればできる限り学習機会を保障する必要があると判断した。
対象は、無戸籍や虐待、犯罪被害などで未就学期間がある▽小学校を不登校▽小学校の就学義務を猶予・免除された(病弱や発育不完全のほか、海外から帰国して重国籍だったり日本語能力が十分になかったりする子ども)▽日本国籍がなく外国人学校小学部に通い、中学に転学を希望する▽15歳までの学齢期を過ぎ、夜間中学入学を希望する――などのケース。ただ、文科省は不登校が理由で小学校を卒業しなかった子どもは極めて少ないとみている。
市町村教委や学校に対しては、こうした子どもたちに個別の支援計画を立て、在校期間を通じた学習支援を検討するよう要請した。都道府県教委にも、必要に応じ国・都道府県の教職員定数の加配などによる指導体制の充実を求めた。