シリコンバレーで開かれた「ヘボコン」で、その場で作ったロボットで対戦する子どもたちと観客=サンマテオ、宮地ゆう撮影
人工知能(AI)や人間の能力を超えるロボットの開発が進むなか、ロボットの「ヘボさ」を競う日本発の大会が、世界的な人気を呼んでいる。その名も「ヘボコン」。これまでに25カ国以上で開催され、速さや賢さとは無縁のロボットの愛嬌(あいきょう)ある戦いが、世界中にファンを作っている。
5月下旬、米シリコンバレーで開かれたもの作りの祭典「メーカーフェア」。3Dプリンターやドローンの展示に人が集まるなか、ヘボコンが開かれている一角から歓声が上がった。
スタンフォード大大学院で宇宙工学を専攻するカレン・ルングさん(25)は「ヘボコンが来ると知って、駆けつけたんです」。その場に用意されていたおもちゃの車輪、風船、猫のぬいぐるみなどを組み合わせてロボットを作り上げた。
ヘボコンの発案者はニフティの娯楽サイト「デイリーポータルZ」編集者、石川大樹さん(35)だ。悪戦苦闘して工作の記事を書く同僚を見て、「世の中には完成品しか出てこない。作るのをあきらめたり、うまく動かなかったりするロボットを集めたらおもしろいのでは」と考えた。2014年、ブログで大会を呼びかけると、1日で20人の申し込みがあった。
基本ルールは、二つのロボットが縦50センチ、横100センチのベニヤ板上で相撲のように対戦し、板から出たり倒れたりしたら負け。高度なロボット技術を戦わせる「ロボットコンテスト(ロボコン)」と違い、要件は「技術的に稚拙であること」。遠隔操作や自動操縦など、規定より技術力が高すぎると減点される。目的は勝つことではなく、いかにみんなを笑わせるかだ。