北極圏のすすの温度シュミレーション
スーパーコンピューター「京(けい)」を使い、大気中の黒色炭素(すす)が北極圏に運ばれる様子を、理化学研究所や東京大学などのグループがより正確に試算した。すすは地球温暖化の原因の一つで、地球全体での高精度な気候変動予測につながる可能性がある。
英科学誌サイエンティフィック・リポーツに発表した。化石燃料が燃えるなどして排出され、大気中を浮遊するすすは、太陽光を吸収して気温を上げ、北極の氷を早く溶けさせる。だが、理研の富田浩文チームリーダー(気象・気候学)によると、従来のシミュレーションは大気を56キロ四方の間隔に区切って計算していたため、雲を細かく再現できなかった。
そこで、京を使って、大気を3・5キロ四方に細かく区切り、低気圧や前線による雲の微細な構造を再現。その結果、従来は雨といっしょに地上に落ちたと計算されていたすすが、空中を移動して北極に届いていたとされた。2011年11月の2週間分の試算では、従来より4倍の量のすすが北極圏に流入したとの結果が出て、北極圏で観測された量とほぼ一致した。
理研の佐藤陽祐・基礎科学特別研究員は「地球規模での気候予測にも活用が期待できる。温暖化の正確な評価につながるかもしれない」と話している。(後藤一也)