司法書士が弁護士に代わって債務整理の業務を担当できる境界が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷(大谷直人裁判長)は27日、「債権の請求額が140万円を超える場合は、司法書士は担当できない」とする初判断を示した。「依頼人が得られる利益額が140万円以下なら担当できる」と解釈してきた司法書士の業務範囲を狭めるもので、金利の過払い分の請求など今後の業務に大きな影響が出そうだ。
司法改革の一環で2002年に司法書士法が改正され、取り扱う額が140万円以下なら、司法書士も簡易裁判所の民事裁判や債務整理ができるようになった。ただ、この解釈をめぐって、「貸主の請求額が140万円以下」とする日本弁護士連合会(日弁連)と、業務範囲をより広くとらえた「依頼人の利益額」とする日本司法書士連合会(日司連)との間で対立してきた。
第一小法廷は、司法書士が代理できる範囲について、「複数の債権がある場合でも、個々の債権の請求額を基準に上限額を定めるべきだ」と判断。「和解の成立時点で初めて判明するような利益額や、債権の総額などの基準で決められるべきではない」と述べ、個々の債権額が140万円を超える場合は、司法書士の業務範囲外と結論づけた。
この訴訟では、司法書士に債務整理を依頼した和歌山県の家族が、「司法書士が業務範囲外の債務整理をしたために損害を受けた」と司法書士に賠償を請求。一審・和歌山地裁は日司連側に近い判断をしたが、二審・大阪高裁は日弁連側の主張を採用した。
最高裁の判決を受け、日司連の小沢吉徳・常任理事は「主張が受け入れられず、遺憾だ。判決は厳粛に受け止めて会員に周知していくが、特に弁護士の少ない地方で、国民が司法にアクセスしにくくなる懸念がある」と話した。日弁連側は「判断は市民にわかりやすく、妥当なものだ」とするコメントを発表した。(市川美亜子)