独アウディ日本法人は5日、高性能スポーツ車をそろえる専門の販売店「アウディスポーツ」を全国24カ所の正規販売店内にオープンした。高級車販売が好調な国内市場でブランドのさらなる浸透を図り、販売増につなげたい考えだ。
アウディは独フォルクスワーゲン(VW)グループの高級ブランド。走破性の高い四輪駆動をウリにした高性能・高品質なイメージを武器に、売れ筋の大型SUV(スポーツ用多目的車)もいち早く投入。2010年には1万6854台だった国内新規登録台数は、14年には3万1413台にまで増加している。
「アウディスポーツ」は、エンジンや足回りを高速走行向けにチューニングした「RS」シリーズや、この日に新型が国内発売されたミッドシップエンジンの2千万円超のスーパーカー「R8」などの高性能車のみを取り扱う。アウディは耐久レースのルマン24時間で13回優勝するなどモータースポーツに注力するものの、メルセデス・ベンツ「AMG」やBMW「M」といった他ブランドの高性能シリーズに比べて知名度がやや劣っており、浸透が課題となっていた。
日本法人の斎藤徹社長はこの日、横浜・みなとみらい地区の旗艦店であった発表会で、「スポーティーなイメージを訴求して、RSシリーズの販売台数を倍増させたい」と話した。
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アウディが専門チャンネルで自信たっぷりに売り出すRSシリーズ。その魅力を横浜・みなとみらいでの試乗で探った。
■RS5クーペ
10年に販売開始。ベースとなるA5は07年発売で、母国ドイツではフルモデルチェンジが発表されたばかり。着座位置の低いインテリアはシンプルな造形で、モデル末期の古くささを感じさせない。
次期型のエンジンはコンパクトな6気筒電動ターボ化が予想されているが、昔ながらの4・2リッター自然吸気V8は、低速から悠然とトルクが湧く。
太いピラーの2枚ドアはいかにも剛性が高そうだが、残念ながら法定速度では限界域の挙動を確かめることができなかった。
■RS7スポーツバック
13年に発売した5ドアハッチバック。国内ではかつてのトヨタ・コロナ以来めったに見ない形だが、欧州では定番だ。全長5メートルの大柄なボディーなのに乗車定員は4人というぜいたくな仕立て。
RS5よりも設計の新しい4リッターV8ツインターボは、ファイアパターンのように赤く塗られたエンジンカバーとは裏腹に、走行状況に応じて4気筒で走るエコ仕様だ。
車体後方まで窓が広がるハッチバックの恩恵で、意外と見切りが良くて運転しやすい。フロントガラスに速度とナビゲーションの矢印が映るヘッドアップディスプレーで視線移動が少なくて済むのもあり、おおらかに流すグランツーリスモ的性格が濃く感じた。それなら560馬力も必要なのか? という問いはヤボだろう。「成功の証しとしてスポーツカーを欲するお客さま」(日本法人の斎藤社長)も想定オーナーにするラグジュアリーカーでもあるからだ。(北林慎也)