石黒浩・大阪大教授(右)と夏目房之介さん(左)=東京都千代田区の二松学舎大、角野貴之撮影
学校法人二松学舎が大阪大学、朝日新聞社と製作を進めている夏目漱石のアンドロイド(人間型ロボット)。製作の中心である大阪大の石黒浩教授と、自身の声がアンドロイドの合成音声となる漱石の孫でマンガコラムニスト・学習院大教授の夏目房之介さんが二松学舎大で対談した。併せて、二松学舎の水戸英則理事長と西畑一哉常任理事にアンドロイドを作る狙いを聞いた。
吾輩はロボになる 漱石アンドロイド製作へ 声は孫・房之介さん
夏目 石黒さんが監修してマツコロイドが出演したテレビ番組「マツコとマツコ」の大ファンでした。今回、「漱石の真実の姿」の再現が目的なのではなく、今の我々が漱石をどう思っているかがポイントだと思います。アンドロイドは単なるハードであり、周囲の人たちが色々なことをさせることで漱石像ができていく。例えば今の日本人が持つ坂本龍馬のイメージはまず司馬遼太郎が作ったものだが、司馬史観の竜馬像に対する異論も含めて現在の竜馬像といえる。司馬個人が作ったイメージが共有され、さらに映像化で違う連鎖が生まれる。今回はいわば集団制作。作品化するプロセスが作品、といえるのでは。
石黒 理系の研究は、①問題を見つける②解答を評価する基準を見つける③評価基準にそって問題を解く、という手順で行われる。③は誰でもできること。新しい問題と評価基準を探すことが本当の研究。今回は「この条件を満たせば完全なアンドロイド」という評価基準はない。アンドロイドができたら面白いだろう、という直感に支えられている。ある程度史実に基づいて漱石を再現するのは大事だが、現代人の中で漱石がどんなイメージを持たれていて、どう受け入れられているかをアンドロイドを介して共有する。漱石の人物像を集約する時に、アンドロイドはその一つの土俵になるのではないか。文学的にも非常に意味があると思う。
夏目 表象・表現を意味する「…