日本臨床腫瘍(しゅよう)学会理事長の大江裕一郎・国立がん研究センター中央病院副院長=東京都中央区
肺がんなどの治療で使われる新薬オプジーボをめぐり、専門医らでつくる日本臨床腫瘍(しゅよう)学会が、患者向けに注意を呼びかける文書を出した。有効性や安全性が確認されていないがんの患者への使用などが相次いでいるという。使用を検討している患者はどんなことに注意すべきか。同学会理事長を務める大江裕一郎・国立がん研究センター中央病院副院長に話を聞いた。
がん新薬オプジーボ、自由診療併用で死亡例
――オプジーボについて、患者向けに文書を出した背景は何ですか。
オプジーボは、国内では皮膚がんの「悪性黒色腫」(メラノーマ)や非小細胞肺がんの患者に対し、単独で使う場合のみ有効性と安全性が確認され、承認されています。9割の患者は大きな副作用は出ないが、1割の人には間質性肺炎や甲状腺機能の異常など様々な重い副作用が出てしまいます。
こうした重い副作用が出た時に対応できるように、製造販売する小野薬品工業は、24時間の診療が可能な医療機関や、十分な知識・経験がある医師など要件を定め、国内でのオプジーボの供給先を絞っています。要件を満たさない医療機関は国内でオプジーボを入手できないのですが、海外から個人的に輸入し、自由診療の施設で「不適切」に使われている事例が報告されています。
――具体的にどのような事例があるのでしょうか。
重い副作用を起こした患者がきちんと対応してもらえず、ほかの病院に飛び込んできたという事例があります。国立がん研究センター中央病院でも、国内承認されていないがんに対してほかの医療機関で投与を受けた患者が、副作用でひどい重症筋無力症を起こし、運び込まれました。