広島県出身の作家、湊かなえさん=16日午後、兵庫県洲本市、伊藤菜々子撮影
■「2016ひろしま総文」に寄せて
高校時代は部活一色でしたね。中学校ではバレー部だったんですが、高校は違うことがしたくて剣道部に入りました。かっこよさそうだし、部活じゃないと一生やらないだろうと思って。顧問が女性の体育の先生で、高校から剣道を始めてインターハイまで行った人でした。だから、「高校から始めたことを言い訳にするな」と。練習は厳しかったです。
特集:2016ひろしま総文
夏に1日1キロずつ体重が減っていって、30キロ台になったこともあるんです。先生が心配してケーキを買ってくれました。部活が終わると動けないほどでしたが、私は片道10キロ弱の道を自転車で通学していたので、その体力だけは残しておかないと家に帰れなかった。きつかったです。
それでも、夜寝る前は何かしら本を読んでいました。文庫本を1日1冊のペース。10代のときは早く読めたんです。文字を目で追いかけるのも速くて、すっと頭に入ってくる。いまでは何度も読み返してしまいますが、いい時期だったんでしょう。
父も母も本が好きだったので、小学生のころから家にある本を読んでいました。うちは農家で、夏休みのあいだは朝起きたら母親も畑に行っていて、暑くなる昼前まで帰ってこなかったんです。そういうとき、課題図書みたいな感じで机の上に置いてあったのがきっかけでした。
母が子どものときに買ってもらったというポプラ社の「怪盗ルパン」シリーズとか。あとは、テレビ台が本入れになっていて、ドラマで知った松本清張や横溝正史の本を見つけては手に取りました。あまり子ども向け大人向けを意識せずに、目についたものからという感じで。無造作にいろんなところに本があったんです。世界文学全集もありましたが、そのころからミステリーの方がおもしろいなと思っていました。
部活はしょっちゅうやめたくなりましたが、昇段審査に受かったり、試合に勝ったりするとうれしくて、もうちょっとがんばるぞと。でも、続けていてよかった。あの時がんばれたんだからこれくらいのしんどさはまだ大丈夫、と思えるようになりました。執筆で睡眠時間を削ってしんどいときも、高校のときのしんどさを基準にして「ここからもうひとがんばり」ができています。
高校時代は、まわりの反応も気…