主力商品に成長した「ブラックサンダー」を手にする伊藤大介さん=19日、東京都小平市の有楽製菓
騒動は一本の電話から始まった。
特集:リオオリンピック
「体操の内村航平選手が御社のチョコレート菓子『ブラックサンダー』が大好物のようなんです。コメントをいただけませんか」
2008年北京五輪の前、たしかスポーツ紙の記者からだった、と製造元の有楽製菓マーケティング課長、伊藤大介さん(39)は振り返る。当時、社内に内村選手を知る社員はいなかった。これも何かの縁と思い、内村選手に320個入り1ケースを贈った。
内村選手はこの大会で銀メダルを獲得。同社には取材が殺到した。商品の発注も相次ぎ、2カ月分の在庫が1週間で底をついた。翌09年、販売数が1億個を突破。11年に工場を新設した。今では同社の売り上げの25%を占める看板商品に成長した。
ココアクッキーとビスケットをチョコで包んだブラックサンダー。実は1994年の発売当初は全く売れず、一度姿を消しかけた。ただ、なぜか九州での人気が根強かった。「内村選手も長崎育ち。小さいころ、身近な場所で手にとってくれたのかなと想像するんです」と伊藤さん。全社員にとって、内村選手が特別な存在になった。(山本亮介)