NHK経営委員会の石原進委員長が、委員会の場で参院選投開票日の放送内容について注文をつけていたことが、29日に公開された議事録でわかった。放送法では経営委員の個別番組への干渉を禁じていて、同法に抵触する可能性がある。
議事録によると、石原氏は12日の経営委員会で、参院選の開票速報を伝える選挙特番について「放送が全国から福岡に切り替わると同じことを話していた。もう少し別のやり方はないかなと感じる」と発言。さらに「福岡の時間を減らして全国放送を長くすればよいのでは」などと注文した。執行部の荒木裕志理事は「どうしていくかは検討していきたい」と応じた。
放送法は第3条で「放送番組は(中略)何人からも干渉され、又(また)は規律されることがない」と定めた上で、第32条で経営委員の権限について「委員は、個別の放送番組の編集について、第3条の規定に抵触する行為をしてはならない」と規定。第32条は2007年の参院選後、当時の古森重隆委員長が選挙期間中の放送内容について注文をつけたことが問題視され、編集の独立性を明確にしようと加えられた経緯がある。
石原氏は朝日新聞の取材に、「個別の番組に注文をつけたつもりは一切なく、選挙番組の感想を述べただけだ」と説明。砂川浩慶(ひろよし)・立教大教授(メディア論)は「経営計画や執行部のチェックが経営委員の仕事で、石原氏の発言は不適切。委員会が恒常的に番組に口を挟むことが許されれば、報道の自由が脅かされることにもなりかねない」と指摘した。