元朝日新聞記者の植村隆氏(58)の長女(19)が、ツイッターで自身への中傷や写真を投稿されて精神的苦痛を受けたとして、投稿した関東在住の40代男性に170万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が3日、東京地裁であった。朝倉佳秀裁判長は「未成年への悪質な人格攻撃だ」として、請求通りの全額を支払うよう男性に命じた。
判決によると、男性は2014年9月、ツイッターで、当時高校2年生だった長女の氏名や写真とともに中傷する内容の投稿をした。男性は事実関係を争わず、判決は「植村氏が朝日新聞記者時代の慰安婦報道をめぐってバッシングを受けている中で、長女の氏名などを投稿した」と認定。ツイッターの拡散性の高さなども考慮し、「高校生だった長女の恐怖と不安は耐えがたいものだった」として、慰謝料は長女側の請求分を上回る200万円に相当する、と述べた。
長女側は、米ツイッター社や男性が使ったプロバイダーに対し、発信元の情報を開示するよう求める訴訟などで男性を特定。今年2月に提訴した。
判決について長女は「ネット空間で利己的な欲求のために誰かを攻撃し、プライバシーをさらすようなことをやめさせる契機になってほしい」とのコメントを出した。長女側の弁護団は「無関係な家族へのネット上の攻撃が許されないことや、匿名の投稿でも特定できるケースがあることが、改めて示された」と判決を評価した。
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元朝日新聞記者の植村隆氏の長女(19)が、3日の判決を受けて弁護団を通して発表したコメントは以下の通り。
裁判官のみなさま
よい判決を出していただき、ありがとうございました。
弁護団のみなさま
私のためにここまで力を尽くしていただき本当にありがとうございました。
心から敬意を表します。
2年前、インターネットやツイッターに私の写真がさらされ、誹謗(ひぼう)中傷の言葉が大量に書き込まれたとき、私は「怖い」と感じました。
匿名の不特定多数からのいわれのない誹謗中傷は、まるで、計り知れない「闇」のようなものでした。
こうした書き込みを、友達が読んだら、どう思うだろうか。
それが心配で、不安でなりませんでした。
そんな中で、私がこの裁判をしようと思ったのは、インターネットの使われ方がおかしいと思ったからです。
テクノロジーが発達し、ネット空間では自由に意見を発表できる場が広がっていますが、利己的な欲求のために誰かを攻撃し、プライバシーをさらすようなことは絶対に許されないことだと考えたのです。
こんな酷(ひど)いことが行えてしまう社会はおかしいと思いました。
また、私に対して起きたことは、他の人にも起こり得るものです。
こうした攻撃にさらされる人がないような社会になって欲しいと思いました。
今回の判決が、こうした不当な攻撃をやめさせるための契機になってほしいと思います。
また、健全なインターネットの利用とは何かについて、考える機会になってほしいと思います。