クラーク国際の大山紘平君=内田光撮影
(12日、高校野球 聖光学院5―3クラーク国際)
動画もニュースも「バーチャル高校野球」
■クラーク国際 大山紘平君
ベンチから身を乗り出し、声を出し続けた。ギプスがとれたばかりの右手を突き上げ、まだギプスが着く左腕をかばうことなく仲間とハイタッチした。
北北海道大会では背番号13の外野手。甲子園初出場を決めた後も、出番をつかむためアピールを続けた。
暗転したのは7月26日の練習だ。中堅で飛球を追って右翼手と衝突。グラブが吹っ飛ぶほど横転し、両手の甲で体を支えてしまった。激痛とともに「甲子園は無理か」と思った。左腕と右手親指付近の骨が折れていた。全治1カ月。監督から「記録員をして欲しい」と言われ、泣いた。
入学した愛知県内の強豪校が合わず、1年の7月に編入した。規定で1年間は試合に出られなかったが、甲子園を夢見て練習に耐えた。ベンチ入りできるのはうれしいが、プレーがしたかった。練習を直視できない。寮ではベッドにふさぎ込んだ。そんなとき、「お前はチームの一員。力になってくれればうれしい」と仲間に言われた。
切り替えた。指は動く。練習の合間に水を配った。中継プレーの時計係になった。不在だったマネジャー役を買って出た。
迎えた甲子園。八回に逆転されたが、「自軍のページが(安打を示す)赤の印で染まりますように」とスコアブックに願いを込めた。かなわなかった。でも「選手と同じ気持ちで、最後までみんなと戦えた。幸せです」。(有田憲一)