春節(旧正月、今年は2月12日)が近づいて、年越しムードが高まり、年越し用品の準備を始める人も多い。ただ今年は特殊な年で、新型コロナウイルス感染症対策の必要から、「今いるところで旧正月」を過ごすことが多くの人々の選択肢になっており、帰省しない「原年人」がますます増えている。 政策が「原年人」を支持 「原年人」とは感染症の影響で生まれた「新語」であり、「原地過年的人(現在の居住地で年越しをする人)」を指す。 最近になって感染症が複数の地域で散発した。1月16日、国の7当局が通達を出し、労働環境を安定させ従業員を現在の居住地から動かないようにするための特定活動を展開し、出稼ぎ労働者が現在の居住地にとどまって年越しをすることを支持すると通達した。 出稼ぎ労働者が現在の居住地で年越しをするようにするため、各地はあの手この手で強力な措置を打ち出している。浙江省寧波市奉化区は、500元(1元は約16.0円)の春節消費券を支給し、観光スポットである渓口風景区の入場料(210元)を無料にするほか、「現金のお年玉」も支給する。福建省泉州市は、市外の戸籍を持つ企業労働組合員で市内で年越しをする人に対し、審査と確認の上、1人あたり基準額200元の補助金をネット経由で支給する。また市外の戸籍を持つ企業従業員で経済的に困難な家庭の人には、1世帯あたり1千元の補助金を1回に限り支給する。 政府が行動を取るだけでなく、企業も積極的に対応している。山東省煙台市の煙台経済技術開発区管理委員会は春節連休中も市内にとどまる市外出身従業員に1人あたり300元の補助金を支給し、広東省東莞市の企業は春節連休中も市内にとどまる市外出身従業員に900元の奨励金を支給する。江蘇省蘇州市相城区が打ち出した政策では、春節連休の7日間に、補助金の基準額として1人あたり500元の企業補助金を支給する。また企業が春節期間も従業員を勤務させた場合は、1人1日あたり100元の基準額で追加補助金を支給する。 若い「原年人」の年越しを家族も支持 石さんは北京の大学3年生で、実家は河北省石家荘市にあり、今年は大学にとどまって年越しをすることにした。 1月4日以降、石家荘市では新型コロナの感染者および無症状感染者が度々確認されている。石さんは元々試験が終わった次の日に帰省する予定だったが、石家荘の感染対策状況から考えて、「大学にとどまって過ごした方がよい」と考えるようになった。 家に帰れない旧正月となってしまったが、心は落ち着いている。最初の頃、家族に「北京にとどまって年を越す」と話すと、全員この決定を賛成してくれたという。 1月7日、石家荘市の感染症対策が厳しさを増すと、石さんは両親と話し合い、全員が「すべて大局に従い、国や政府に迷惑をかけず、呼びかけに応じて行動すればいい」との結論に至った。 石さんの大学も、学内にとどまる学生に向けて、売店、食堂、給湯室など大小さまざまな設備の利用時間や利用条件などを書いたサービス案内を配るという心配りをみせた。 石さんは「原年人」という言い方に違和感はないという。それどころか、大学で過ごす休み中、普段通りの生活や勉強を続けられると考えている。 石さんは休み中にノンフィクション作品を何冊か読むほか、「資本論」をちゃんと読んでみようと計画し、さらに進学に関するプランも立てたいと考えている。 石さんと似ている境遇の人に四川省徳陽市出身の曹さんがいる。北京市朝陽区で働いている曹さんは、6日前に帰省の航空券を予約しようとしたが、計画を変更せざるを得なくなった。「母からしばらくは帰らない方がいい、帰ってもたぶん隔離になると言われた」。こう話す曹さんは少し寂しそうだったが、すぐに気持ちを切り替え、「1人で過ごす春節だって悪くない。いろいろ買い込んで、家にこもっていればいいんだから」と話した。 コンテンツプラットフォームが故郷の風景をおすすめ 今年は、90後(1990年代生まれ)と00後(2000年代生まれ)が現在の居住地での年越しの「クリエイティブプレイヤー」になった。インターネットとSNSを組み合わせることで、素敵な風景を見つける可能性がさらに広がっている。データによると、帰省しないことを推奨する年越し関連政策が発表されると、コミュニティプラットフォームでは各地に関するコンテンツの検索件数が127%増加した。ユーザーはプラットフォームで旅行の達人がおすすめする故郷の動画、写真、文章などを見て、家に帰れなくても、ネットで故郷の素晴らしい風景を眺めることができる。 現在の居住地で年を越す場合でも、食いしん坊たちはおいしいものを追求することはやめない。関連プラットフォームの1月4-17日のデータによれば、春節が近づいてグルメ関連の検索件数は明らかに増加しており、これから春節に近づくほど増加幅も大きくなるとみられる。例年、旧暦12月24日前後に増加幅がピークを迎えている。今年はグルメの検索の中で、地元グルメの割合が50%を超えるという。 地元のグルメ検索で人気の都市上位5ヶ所は重慶、上海、成都、北京、広州だ。このうち重慶は増加幅が30%を超え、上海は15%前後だった。データからわかるのは、バイキング、火鍋、シーフード、焼き肉、羊肉などのグルメが最も人気があることだ。 「今いるところで旧正月」の呼びかけの下 自分をねぎらい「ホテルで過ごす」 「今いるところで旧正月」を受けて、近郊レジャー市場の一部が盛り上がりをみせている。 旅行サイト・携程が提供したデータによると、春節連休期間に「ホテルで旧正月」人気が上昇中で、近郊のリゾートホテルが特に人気で、普段一線都市や新一線都市に暮らしている人が消費の中心だという。携程で予約した人のうち90後の割合が58.79%に上り、80後(1980年代生まれ)は20.42%、00後は9.09%に上昇した。一線・新一線都市のユーザーは、「ホテルでリゾート」をして一年間頑張った自分をねぎらいたいと考える人が多い。都市別の予約件数をみると、上海、北京、広州、蘇州などの都市は今年の春節でも上位に名前が挙がる。 また民泊予約プラットフォームの途家網が提供した予約データでも、北京近郊の民泊施設は春節連休の客室稼働率が7割を超える。これと同時に、一部のプラットフォームも「今いるところで旧正月」を積極的にPRし、春節連休向けの各種イベントや優遇措置などを打ち出し、消費者が普段暮らしている都市にとどまり、その場所ならではの魅力を堪能するよう誘導・奨励している。 周辺観光は新しい選択肢 今年の春節には、「原年人」はただ家にいるだけでなく、家から出ないで詩情を味わい、遠くの景色を楽しむ方法も見つけ出している。 1月21日、携程が現地の魅力を紹介する「今いるところで旧正月・虎の巻」を打ち出し、若者がどうやって家から出ないで詩情を味わい、遠くの景色を楽しんでいるか、その秘訣を紹介した。データによると、政策の影響を受けて「今いるところで旧正月」の人気が260%上昇したという。検索件数全体のうち、「現在の居住地で出かける」の占める割合が40%を超えた。人々が住んでいる場所の素晴らしい景色を発見しようと大きな熱意をもっていることがわかる。冬に人気の温泉とスキーも、地元客が増加した。また九皇山(四川省)に登って景色を眺める▽霊隠寺(浙江省)を訪れて新年の幸福を祈念する▽古北水鎮(北京市)で静寂に浸るひとときを過ごす▽現在の居住地の博物館、植物園、動物園、テーマパークに出かけるなど、どれもみな若い人が「今いるところで旧正月」を過ごす時の新しい選択肢となっている。 データからわかるのは、感染症対策をしっかりした上で、ユーザーの8割以上が現在の居住地内での移動を好むという傾向が見られる。上海、湖州、広州、成都、重慶、武漢、貴陽、寧波、長沙、鄭州では、これらの都市内での移動回数が増加している。このうち上海は約61%増加、湖州は約55%増加、成都と重慶もそれぞれ40%増加している。(人民網日本語版論説員) >>>丸わかり!中国キーワード 「人民網日本語版」2021年1月26日 |
【中国キーワード】新型コロナ下の年越しで生まれた新語「原年人」とは?
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