駅の改札を出て勤め先に向かう金子聡さんと盲導犬のエクルス=8月23日午前8時20分、東京都目黒区、関田航撮影
東京都港区の東京メトロ銀座線青山一丁目駅のホームで先月15日、盲導犬を連れていた男性(55)が線路に転落し、亡くなった。盲導犬を連れた視覚障害者がどんな生活を送り、街にはどんな危険があるのか。都心の会社に勤める男性の一日に密着した。
盲導犬連れた男性、列車と接触し死亡 ホームから転落
午前7時すぎ。豊島区の金子聡さん(49)の家を訪ねると、玄関で座ってエクルス(3)の手入れをしている最中だった。トイレにブラッシング。「ほい、ここ」とももをたたくと、エクルスがあごを乗せた。口を開けさせ、タオルでゴシゴシ歯を磨いた。
20代の頃から少しずつ視野が狭くなっていき、7、8年前にほぼ見えなくなった。今は一人暮らしで、ヨーグルトの製造販売「ダノンジャパン」(目黒区)で働いている。
家を出て路地に差し掛かると、エクルスが歩みを止める。「グッド。ストレート、ゴー」。音や気配で車が来ないことを確認し、金子さんが指示を飛ばす。
東京メトロ副都心線雑司が谷駅に着いた。エレベーターに乗ろうとした時、女性が「入れますよ、そのまま真っすぐで大丈夫」と声をかけてくれた。「ああやって気に掛けてもらえるとありがたいですね」
この駅はホームドアがある。エクルスが線路側、金子さんがホーム側を歩く。「何の心配もなく歩けます」。白杖(はくじょう)を使っていた2008年ごろ、渋谷駅でホームを歩いていたら右側で人波の気配が消え、すいている方へと思って足を踏み出すと線路に転落。盲導犬を使うことを考え始めた。
降りるのは、会社最寄りの東急東横線中目黒駅。両側に線路がある「島式ホーム」だ。東横線側にはホームドアがあるが、反対側の日比谷線側にはない。「ホームはなるべく歩きたくない。犬が人混みを縫っているうちに、どっちが線路側か、分からなくなる」。白杖でも盲導犬を使っていても、「錯覚」が一番怖いのだという。
ダノンジャパンに着いた。金子…