判決後に会見する(左から)浅川一雄さん、高橋シズヱさん、仮谷実さん=7日午後、東京・霞が関、諫山卓弥撮影
13人が死亡し6千人以上が負傷した1995年の地下鉄サリン事件など、オウム真理教が起こした五つの事件に関与したとして殺人などの罪に問われた元信徒・高橋克也被告(58)の控訴審判決が7日、東京高裁であった。栃木力裁判長は、高橋被告を無期懲役とした昨年4月の一審・東京地裁判決の認定に「誤りはない」と述べ、被告の控訴を棄却した。(塩入彩)
オウム・高橋被告、二審も無期懲役 東京高裁判決
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「数々の事件に関与しながら、一言のおわびもなかったのはものすごく腹立たしく思っています。17年も逃亡して何を考えていたんだろう、と」。判決後、地下鉄サリン事件で駅助役だった夫を亡くした高橋シズヱさん(69)は語った。
一、二審を通し、高橋被告から謝罪の言葉はなく、この日も高橋さんらと目を合わせることもなかった。公証役場事務長拉致事件で死亡した仮谷清志さん(当時68)の長男実さん(56)は、「これから5年、10年かかるかもしれないが、何らかの形で私たちへのメッセージを出してほしい」と述べた。
最後に起訴された高橋被告の控訴審が終わり、一連のオウム真理教の事件は大きな節目を迎えた。高橋さんはこれまでの教団幹部らの裁判を振り返り、「死刑、無期という重い刑罰が下ったことは、裁判としては報いられた」と述べる一方、裁判員裁判となった高橋被告の一審裁判については「被告を理解するには至らなかった」。あまりに論点が絞り込まれる裁判員裁判のあり方に「このままでいいのだろうか」と疑問を示した。
また、地下鉄サリン事件で妹の浅川幸子さん(53)が重い後遺症を負った兄の一雄さん(56)は「
かなりある。妹は21年間寝たきりで、判決が出ても失われたものはかえってこない。裁判が終わっても、私たちの生活はまだまだ続きます」と話した。
■オウム真理教をめぐる経緯
1984年 「オウム神仙の会」が発足
87年 オウム真理教に改称
89年11月 坂本堤弁護士一家殺害事件
94年6月 松本サリン事件
12月 浜口忠仁さんVX殺害事件
95年1月 永岡弘行さんVX襲撃事件
2月 公証役場事務長だった仮谷清志さん逮捕監禁致死事件
3月 地下鉄サリン事件
5月 山梨県の教団施設に隠れていた松本智津夫死刑囚が逮捕される
東京都庁の知事秘書室で郵便物が爆発、警察庁が高橋克也被告らを特別手配
2006年9月 松本死刑囚の死刑が確定
11年12月 特別手配されていた平田信受刑者が大みそかに警視庁丸の内署に出頭。翌日に逮捕される(その後、有罪が確定)
12年6月 特別手配されていた菊地直子被告と高橋被告が逮捕される
15年4月 東京地裁が高橋被告に無期懲役の判決
11月 東京高裁が菊地被告に逆転無罪判決(検察が上告中)
16年9月 東京高裁が高橋被告の控訴を棄却