関西空港の従業員らのはしか(麻疹)の集団感染で、大阪府は7日、新たに関空を利用した府内の20代男性の感染が確認されたと発表した。朝日新聞の取材では関空関連のはしか感染者は計43人となった。府は8日からはしか予防に有効なワクチンを、未接種か接種歴の不明な30代以下の関空従業員約300人に接種してもらう方針。
府によると、新たに感染が確認された男性は8月19日の国際線の出国時と同26日の帰国時に関空を利用し、9月3日に発熱した。10日程度の潜伏期間を考慮すると、関空が感染場所だった可能性があるという。
7日時点の関空関連の感染者は、従業員33人、接触した医師、救急隊員各1人、利用者4人とその家族4人となった。これまで感染が確認されていた利用者は、7月31日に利用した人だけだったため、感染拡大に警戒が必要という。
府によると、関空従業員で、ワクチン未接種か接種歴の不明な30代以下の人は約900人。ワクチンの確保量を踏まえ、接客に携わり感染者と接触した可能性が高い従業員らに優先して接種してもらうという。
一方、松井一郎知事は7日の定例会見で、最初の従業員の感染がわかった8月中旬の時点で公表しなかった府の対応について「甘かった。ここまで感染すると考えておらず対応は不十分だった」と語った。同日、近畿2府4県の感染症対策担当課の職員らが集まった緊急対策連絡会も開かれ、感染情報の共有を図った。
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はしかの予防について、国立感染症研究所の大石和徳・感染症疫学センター長に聞いた。はしかは空気、飛沫(ひまつ)、接触で感染し、感染力が非常に強い。大石氏は「予防にはワクチンが有効」と語り、特に抗体が十分にない人が他の世代より多い20代後半~30代について「ワクチン接種歴を確認し、はっきりしない人は感染する可能性があるので注意が必要だ」と言う。
大阪府などによると、関空関連の感染者も20~30代が中心となっている。
ワクチンの定期接種は1978年に「1回接種」が導入され、2006年に1歳と就学前の「2回接種」に変わった。大石氏は「1回では予防できるほど十分な抗体がつかない場合がある」と話す。定期接種開始から約10年間は接種率も高くなく、20代後半~30代は抗体が不十分な人が多いという。定期接種導入前の世代は、はしかにかかり免疫を持つ人が多いという。(太田成美)