沖縄県東村(ひがしそん)高江の周辺で進められているヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の移設工事をめぐり、住民33人が21日、国を相手取り、建設の差し止めを求める訴訟を那覇地裁に起こした。差し止めの仮処分も同時に申し立てた。ヘリパッド移設をめぐって住民が裁判を起こすのは初めて。
特集:沖縄はいま
ヘリパッドは米軍北部訓練場(国頭村〈くにがみそん〉、東村)の半分(約4千ヘクタール)を返還する条件として6カ所建設する計画。すでに2カ所が完成し、国は7月以降、残る4カ所の工事を始めている。
原告は高江地区の31人と、隣接する国頭村安波(あは)地区の2人。訴状では、完成済みの2カ所に米輸送機オスプレイがたびたび飛来して騒音や振動が発生し、睡眠妨害などの被害を受けていると主張。さらに4カ所が完成すれば被害が激化し「心身の健康を維持し、普通の生活を営むことができなくなる」と訴えている。
弁護団は「完成すれば、その後の裁判で騒音の違法性が認められても、米軍の活動を制限することはできない」と説明。原告の伊佐育子さん(55)は「オスプレイが近くを飛ぶと、頭痛や吐き気をもよおす。残り4カ所が完成したら本当にどうなるのかと不安だ」と話した。
一方、沖縄県の安慶田(あげだ)光男副知事は21日、県庁で中嶋浩一郎・沖縄防衛局長と面会し、資材運搬車両用の道路を整備するなど工事内容を変更したのに環境への影響を調査していない、などとして工事の中断を求めた。中嶋局長から明確な返答はなかったという。(吉田拓史)