1970年の大阪万博。6400万人を超す人が訪れた
大阪府が2025年の誘致を目指す国際博覧会(万博)について、安倍政権が前向きな検討を始めた。東京五輪後の一大イベントとして、経済効果を期待するからだ。府は10月末に万博の基本構想を政府に示す方針。ただ、開催に必要な巨額の費用をどう捻出するかなど課題は多い。
「地方を訪れる観光客が増大し、地域経済が活性化する起爆剤になることが期待される。しっかり検討を進める」。先月28日、衆院代表質問で安倍晋三首相は、日本維新の会の馬場伸幸幹事長に万博誘致について問われ、力を込めた。
大阪府は25年5月から6カ月間、大阪市の湾岸部にある造成中の人工島「夢洲(ゆめしま)」で「健康・長寿」をテーマに万博を開く構想を練る。3千万人の来場者を見込み、全国への経済波及効果は約6・4兆円と試算する。万博誘致は維新の肝いりの構想だ。代表を務める松井一郎知事は、これまで何度も首相や菅義偉官房長官らに働きかけてきた。
昨年12月、都内のホテルでの会談には大阪市長を退任したばかりの橋下徹氏も出席。この場で松井氏が誘致に理解を求めると、首相は「今後、詳しく教えてほしい」と応じ、菅氏も会談後、経済産業省などに府への協力を指示したという。
首相や菅氏が前向きなのは、20年の東京五輪後の景気浮揚策として万博誘致が有効との判断があるからだ。五輪後には会場建設やインフラ整備などの巨額投資の反動で景気の冷え込みも予想され、万博への新たな投資で景気を下支えしたい考えだ。1964年の東京五輪から6年後の70年に大阪万博を開催し、高度経済成長を引っ張った。閣僚の一人は「五輪後の経済を考えれば当然、万博をやった方がいい」と話す。
誘致の後押しは、首相が悲願とする憲法改正を見据えるうえでも維新を引きつけておくのが得策との思惑もありそうだ。衆参両院で憲法改正が発議できる「3分の2の改憲勢力」の中で、維新の協力は欠かせない。維新幹部のひとりは、政権の期待を見透かしたように、「万博で大きな恩ができれば、憲法改正にもとことん協力する」と語る。