黒煙を上げる東京電力の施設。後方は都内方向=12日午後4時22分、埼玉県新座市、朝日新聞社ヘリから、嶋田達也撮影
12日午後3時半ごろ、東京都内で停電が発生し、豊島区や練馬区を中心に都心部を含む約58万6千戸が一時停電した。東京電力によると、埼玉県新座(にいざ)市野火止7丁目の地下に設置された電力ケーブルで漏電、火災が起きたのが原因とみられるといい、午後4時25分ごろには復旧した。交通の乱れなどの影響が出た。
東電などによると、同日午後2時55分ごろ、新座変電所(埼玉県新座市)と都心にある変電所をつなぐ電力ケーブルが通る「洞道(どうどう)」と呼ばれるトンネル内で火災が発生した。新座変電所から約1・9キロ離れた場所とみられるという。洞道への出入り口から黒煙が噴き出した。火災は13日午前0時21分に鎮火した。埼玉県警がトンネル内の火災や停電との関連を調べている。
洞道は地下約6・2メートルに掘られ、内部には新座変電所から豊島変電所(東京都豊島区)への9本、練馬変電所(同練馬区)への9本の計18本の電力ケーブルが通っている。各ケーブルには電圧27万5千ボルトの電気が流れている。
この二つの系統を経由して電力が供給される地域は都心中心部の広い範囲に及び、東京地裁や国土交通省、文部科学省など霞が関の中央省庁も一時停電した。
停電の影響で、西武鉄道は12路線のうち池袋線など10路線(一部含む)で一時的に運転を見合わせた。都営地下鉄大江戸線でも一時運行できなくなった。
国土交通省によると、停電によって人がエレベーターに閉じ込められる事案が都内で51件発生。大部分は間もなく救出され、けが人はいなかったという。
警視庁によると、新宿、杉並、練馬、板橋、港、中野、北の各区などで計約200カ所の信号機が一時機能しなくなった。警察官が手信号で対応するなどしており、大きな事故は確認されていないという。
大規模停電を受け、経済産業省は12日、新座市の洞道などの現場に、電気事業法に基づく立ち入り検査を行い、原因究明に当たることを明らかにした。新座変電所では8日午後にも、変圧器の漏電が原因で短時間の電圧低下が起きたが、東電は12日の記者会見で「現時点では(今回の停電との)関係は確認できていない」としている。