関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止め訴訟の控訴審で、原告側弁護団が、元原子力規制委員会委員長代理の島崎邦彦・東大名誉教授(70)の証人尋問を名古屋高裁金沢支部(内藤正之裁判長)に申請した。島崎氏は地震学者で、関電が地震の揺れの算定に使った計算式では「過小評価の可能性がある」と指摘していた。
申請は14日付。今後高裁支部が採用するか判断する。島崎氏の指摘は他の原発訴訟でも書面で証拠提出されており、証人として証言した場合、他の裁判に影響を与える可能性がある。
島崎氏は2012年9月から2年間委員長代理を務め、新規制基準に基づく審査で専門家会合のまとめ役を担った。退任後、学会などで原発の地震想定で使う計算式「入倉・三宅式」では過小評価になる可能性があると主張。15年に原告側がその論文を証拠として提出し、今年6月に島崎氏の陳述書も出していた。
島崎氏の指摘を受け、規制委では田中俊一委員長と島崎氏が面談を重ね、別の手法で再計算するなどしたが、規制委は「揺れの大きさを見直す必要はない」と結論づけ、意見がすれ違ったまま議論を終えていた。
原告側弁護団は「島崎氏に直接証言してもらうことで、指摘に正当性があり、規制委の再計算も不十分だと訴えたい」と話す。
大飯3、4号機をめぐっては、14年5月に福井地裁(当時・樋口英明裁判長)で運転差し止めを求めた住民らが勝訴。関電などが高裁支部に控訴していた。(西村圭史)