昨年末に自殺した広告大手、電通の女性新入社員(当時24)の遺族側代理人を務める川人博弁護士が29日、日本記者クラブで記者会見した。電通が取り組むとしている労働環境の改革に触れて、「(社員の心得の)『鬼十則』を社員手帳から削除することを直ちに決定するべきだ。遺族も強く求めている」と話した。
電通の「鬼十則」、社員手帳掲載取りやめを検討
「鬼十則」は、4代目社長の故吉田秀雄氏が書いたといわれる遺訓。「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……」という一節があり、長時間労働を助長しかねない心得だとして遺族が問題視している。電通は来年の社員手帳への掲載とりやめを検討している。
川人氏は電通の企業風土について、「『鬼十則』に端的に示される労務管理の思想がある。業務の目的達成が、働く者の健康よりも優先されている」と批判。「経営者が事実に真摯(しんし)に向き合い、批判を謙虚に受け止めることが大事。小手先の改革を装うことはあってはならない」と指摘した。
広告業やサービス業などの第3次産業で、顧客への過剰サービスが仕事を増やしているとして、「発注側や消費者が、働く側の労働条件を考慮する必要がある」とも訴えた。(編集委員・沢路毅彦)