今年のノーベル文学賞が米ミュージシャン・作詞家のボブ・ディランさんに決定したことを受け、シンガー・ソングライターの南こうせつさんが語った。
特集:ボブ・ディラン
◇
シンガー・ソングライターが、こういうかたちで世界に注目されるのはとってもうれしい。全世界のアーティストに、ものすごい扉が開かれた気がします。彼は、グラミー賞のロック部門の第1回受賞者なんですよね。それがノーベル賞をとっちゃうなんて。
でも、これだけたくさんのアーティストがいるなかで、やっぱりディランなんですねえ。確かにジョン・レノンもスプリングスティーンもマドンナもジャクソンも、社会問題を扱った良い曲を書いている。でも、ディランほど、自分の意志に率直なアーティストはいない。黒人のボクサーが不当な扱いを受けたことへの抗議として、顔におしろいを塗って「欲望」を歌ったという逸話もあるけれど、なんていうのかな、歌というものの本領、ルーツを見せてくれる人なんです。どんな複雑な世界にいたって、僕らは何をやってもいいんだ、僕らは自由なんだ。そうシンプルに、楽曲で伝えてくれる。
僕は中学生のとき、いわゆるプ…