「生前退位」をめぐる今後の見通し
生前退位の意向をにじませた天皇陛下のお気持ち表明をめぐり、政府が設けた「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」の初会合が17日、首相官邸で開かれた。会議はテーマを生前退位に絞らず、公務の負担軽減のあり方など幅広く設定して専門家からヒアリングを行う。年明けにも論点整理を公表し、来春にも報告書を取りまとめる。
天皇陛下は現在82歳で、今年8月8日に「戦後70年という大きな節目を過ぎ、2年後には平成30年(2018年)を迎えます」との言葉で始まるお気持ちを表明した。このため、政府は18年をめどとする天皇の退位を想定。皇室典範の改正よりも課題は絞られるとされる特例法の制定を軸に、来年の通常国会で法制化し、退位を実現させる道筋を描いている。
政府は有識者会議を「白紙から議論する場」(官邸幹部)と位置づけ、国民の理解を得たい考えだ。この日の初会合には、安倍晋三首相や菅義偉官房長官も出席した。
会合では座長に今井敬・経団連名誉会長、座長代理に御厨貴・東大名誉教授を選出した。今後、歴史や皇室問題に詳しい専門家十数人からヒアリングを実施することとし、今月27日に第2回会合を開き、具体的な人選を行う。また、ヒアリングは11月上旬~下旬にかけて3回、非公開で行い、それぞれ約1週間後に議事録を公表するという。
さらに、ヒアリングする際のテーマとして①天皇の役割②天皇の公務のあり方③公務負担軽減の方法④摂政⑤国事行為の委任⑥生前退位⑦退位を認める場合、恒久制度とするか⑧退位した後の天皇の身分や活動の8項目も決めた。女性宮家の創設については、議論の対象とはしない方針。
初会合後の記者会見で、座長となった今井氏は「国民の理解がより深まるよう努めたい」と強調。報告書取りまとめの時期について、座長代理の御厨氏は「あまり遅くならず、拙速にもならずという感じでやっていく」と述べた。会合で、出席者からは「論点や課題を明確に国民に示すことが大切」といった意見が出たという。
有識者会議は年内のヒアリングを受けて、年明けにも論点整理を公表する。政府はその段階で、衆参両院の正副議長のもとで各党で協議してもらうことを想定。有識者会議も並行して議論を進め、来春にも報告書をまとめる方向だ。
■有識者会議の論点
①憲法における天皇の役割
②天皇の国事行為や公的行為など公務のあり方
③天皇が高齢となった場合、負担を軽くする方法
④摂政の設置
⑤国事行為の委任
⑥天皇の退位
⑦天皇が退位できるようにする場合、今後のどの天皇にも適用できる制度とすべきか
⑧天皇が退位した場合の身位(身分や地位)や活動のあり方
■「生前退位」をめぐる今後の見通し
【2016年】
10月17日 有識者会議の初会合
11月上旬 有識者会議が専門家からヒアリング開始
【2017年】
年明け 有識者会議が論点整理を公表
年明け 国会に論点整理を伝え、衆参両院の議長、副議長のもとで各党協議
春ごろ 有識者会議が政府に報告書提出
5~6月 生前退位を実現するための法案を政府が国会提出
【2018年】
9月 安倍晋三首相の自民党総裁任期
12月 現在の衆院議員の任期
【2019年】
1月 天皇陛下即位30年