国連総会第1委員会で発言する佐野利男軍縮大使=17日、ニューヨーク、松尾一郎撮影
国連総会第1委員会で議論され、メキシコなどが主導している「核兵器禁止条約」について、日本政府は17日、演説で賛否は示さなかった。来年の交渉開始を求めて決議案を提出した多くの非核保有国は賛成を示し、ロシアや、米国の「核の傘」の下にあるドイツなどは反対を表明した。
特集:核といのちを考える
佐野利男軍縮大使は「核軍縮を進める上で、核兵器の使用がもたらす人道的影響の正確な認識と、厳しい安全保障環境の客観的な評価の双方がバランス良く考慮されるべきだ」と主張。被爆国でありながら、米国の核の傘の下にある日本の複雑な立場をにじませた。
一方で、佐野大使は「核軍縮へのアプローチの違いから、国際社会が分断されてしまっている」ことを憂慮。「核不拡散条約(NPT)を強化し、維持するために、国際社会が一体となって取り組むべきだ」と述べ、全会一致が基本となるNPT体制への支持を求め、核禁条約に反対する米国などへ配慮したとみられる。
核兵器廃絶を訴える日本主導の別の決議案も含めて、採決は27日以降行われる見通しで、日本政府関係者は「核禁決議案の最終的な文言は分からず、まだ決める段階ではない」と語った。(ニューヨーク=松尾一郎、杉崎慎弥、田井中雅人)