航行する巡視船「くにさき」=門司海上保安部提供
門司海上保安部(北九州市)の大型巡視船「くにさき」が18日、引退した。就航から36年。漁業管轄水域の拡大で大量に造られ、沖縄・尖閣諸島警備の主力も担った「昭和生まれ」の同型船は、21日に役目を終える1隻を残すのみ。ベテラン船長らは、日本の海を長年守ってきた船との別れを惜しんだ。
18日朝。北九州港・日明(ひあがり)地区の海保基地で、「くにさき」の解役(かいえき)式があった。国旗と海上保安庁旗を船から降ろし、中村博通(ひろみち)船長(55)が門司海保の宮尾努部長(59)に手渡した。
ともに「くにさき」を含め同型船に何度も乗った経験がある。「荒れた海でも揺れが少なく、足が速い」。同じ言葉でその特徴を語った。
最大40人が乗り組む「くにさき」は1980年2月に就航した。漁業管轄水域が200カイリに拡大したことを受け、78年から4年間で建造された「1千トン型」28隻の1隻だ。遠く2千キロ先で外国漁船を取り締まることを前提に、当時としては高速にした。重心は低くし、水の動きで揺れを抑えるタンクも置いて外洋の荒天に備えた。警察の機動隊にあたる特別警備隊員を配置した「特警船(とっけいせん)」として原発など重要施設や尖閣諸島、伊勢志摩サミットの警備なども担い、地球約23周分に当たる約92万3千キロを航海した。
能力の高さには定評があった。…