匿名の卵子提供のながれ
病気のために自分の卵子で妊娠できない女性に対し、匿名の第三者からの無償での卵子提供を仲介するNPO法人「OD―NET」(神戸市)は22日、提供された卵子を使った体外受精で国内で初めて女児1人が生まれたと発表した。
提携する医療機関で提供者の卵子を採取し、夫の精子と体外受精させた後、受精卵をいったん凍結保存し、提供者にHIVや肝炎ウイルスなどに感染していないことを確認した上で、妻の子宮に移植した。発表によると、1組の夫婦に今年1月に女児が生まれたという。
提供者と受ける夫婦は、居住地や年齢などを考慮して組み合わせを決め、互いの情報は知らないという。また、生まれた子どもには卵子の提供について告知することを条件にしている。
OD―NETは、患者の家族や不妊治療で実績のある医療機関などが中心になって設立。2013年以降、卵子の提供を申し出た女性は200人以上に上るという。
現在の民法は卵子提供による子どもの誕生は想定しておらず、厚生労働省の有識者会議は2003年、匿名の第三者からの無償での卵子提供を認める報告書をまとめたが、法整備は進んでいない。日本産科婦人科学会は指針のなかで体外受精は事実婚を含む夫婦間に限定し、第三者からの卵子提供は法制化まで待つべきだとの方針を示している。
国内の一部の施設では、姉妹間などでの卵子提供が実施されており、海外で卵子提供を受ける人もいる。一方、卵子提供をめぐっては、提供者の採卵時のリスクや生まれてきた子どもの「出自を知る権利」の確保が課題とされる。(福宮智代)