米通信大手のAT&Tが米娯楽・メディア大手タイム・ワーナーを買収する方向で交渉していると、米経済紙ウォールストリート・ジャーナルをはじめ複数の米メディアが21日伝えた。交渉は大詰めを迎えており、数日内に発表される可能性があるという。買収が実現すると、通信やインターネット、メディアまで幅広い事業を手がける巨大企業が誕生することになる。
タイム・ワーナーの株式時価総額は20日の時点で、およそ650億ドル(約6兆7千億円)。米ブルームバーグ通信によると、買収金額は860億ドル(約8兆9千億円)程度になることが見込まれるという。一部のメディアによると、米アップルも数カ月前にタイム・ワーナー買収に関心を寄せ、協議していたという。
AT&Tは携帯電話の事業で米国2位。主力の携帯事業は、通信大手間の顧客獲得競争が激しさを増し、値下げなどで利益が出にくくなっている。一方のタイム・ワーナーは、映画部門「ワーナー・ブラザーズ」やニュース専門局CNNなどを傘下に保有するなど豊富なコンテンツを持つ。
AT&Tには、タイム・ワーナーを取り込むことで総合メディアグループへの脱皮をはかる狙いがあるとみられる。
AT&Tはすでに昨夏、米衛星放送最大手「ディレクTV」を総額485億ドル(約5兆500億円)で買収する手続きを終え、放送事業に本格的に乗り出している。メディア事業の強化に向けて、積極的な買収を進めている。
AT&Tのライバルで、米携帯電話事業首位のベライゾン・コミュニケーションズは7月下旬、米ヤフーのネット事業買収で合意。米国で個人向け携帯電話の市場が成熟する中、事業の多角化が通信大手にとって急務となっている。
タイム・ワーナーをめぐっては、米娯楽・メディア大手の21世紀フォックスが2014年に800億ドル規模で買収を提案したが、拒否されていた。(ニューヨーク=畑中徹)