ニューヨークにあるAT&Tの店舗=AP
米通信大手のAT&Tが854億ドル(約8兆9千億円)で合意した米メディア大手タイム・ワーナーの買収に、早くも逆風が吹いている。米政治家や大統領選候補が「巨大企業の合併で競争を阻害する」と相次ぎ懸念を表明。両社の経営トップは「互いの事業は競合せず、当局の承認は得られる」と自信を見せるが、先行きは予断を許さない。
AT&Tのスティーブンソン最高経営責任者(CEO)は24日、米経済テレビに生出演し、「これは(両企業の事業が重ならない)垂直統合。こうした合併を規制当局は認めてきた」と強調。同じ番組でタイム・ワーナーのビューケスCEOも同様の主張を繰り返した。
22日の発表後から24日にかけて、両社は「政治的な集中砲火」(米経済紙)を浴びた。議会上院の反トラスト小委員会は、11月に今回の買収計画についての公聴会を開くと表明し、「消費者に悪影響を及ぼさないか注視する」とのリー委員長の談話を出した。
大統領選の共和党候補のトランプ氏は「少数の者に巨大権力が集まる。私の政権では買収を認めない」と発言。民主党候補のクリントン氏の広報担当者は「いくつかの疑問と懸念がある」と述べた。同党の副大統領候補のケーン上院議員も懸念を表明し、クリントン氏と指名獲得争いをしたサンダース上院議員までが「買収は撤回されるべきだ」と明言した。
AT&Tは買収手続きを2017年末に完了する意向。同社は11年、米携帯電話大手TモバイルUSA(現TモバイルUS)の買収でいったん合意したが、独占禁止当局に拒まれた。当時は同業との合併計画だったが、「今回は異なり、合併で新サービス提供が可能になる」(スティーブンソンCEO)と理解を求めていく考えだ。(ニューヨーク=畑中徹)