警視庁が裁判所の令状を取らずに、GPS(全地球測位システム)端末を捜査対象者の車に取り付けていた窃盗事件で、被告の男2人の公判が27日、東京地裁立川支部であった。GPSなどで調べた捜査報告書を証拠として採用するかについて、検察側は「(被告の)実質的な権利制約を伴うものではない」、弁護側は「プライバシー権を侵害する」とそれぞれ主張した。同支部は12月22日に、採否を決める見通し。
被告はともに神奈川県に住む無職の男(42)と建築業の男(44)。2014年に静岡、山梨県内でトラックやバスを盗んだなどとして窃盗罪に問われている。警視庁は14年7月~15年1月、GPS端末7台を使い、2人の車計8台の動きを把握していた。
検察側はこの日、公道上の行動についてのプライバシーの要保護性は高くない▽GPSは捜査員が探索範囲を絞るためだけに使った▽2人の嫌疑は濃厚で早期の検挙が求められた――として、GPS捜査の適法性を主張。事件現場付近まで行ったことや、被害車両に乗ったことを示す捜査報告書などを証拠として、調べるよう求めた。
一方、弁護側は「GPS捜査は当時から適法性が争点になっており、慎重な態度で臨む必要があった」として、証拠採用しないよう求めた。
警察庁は、GPS捜査を裁判所の令状がいらない任意捜査と位置づけている。一方、令状なしのGPS捜査をめぐって、プライバシーを侵害しないかどうかが各地の裁判所で争われ、「違法」「違法ではない」などと判断が分かれている。最高裁大法廷が審理し、統一見解を示す見通し。